変形性膝関節症|膝の痛みよ、さらば!一生歩ける膝を作る【東京情報大学・嵜山陽二郎博士のヘルスケア講座】

変形性膝関節症は、膝関節のクッションである軟骨が加齢や過度な負担によってすり減り、炎症や関節の変形が生じる疾患です。初期には立ち上がりや歩き始めに膝のこわばりや痛みを感じますが、進行すると階段の昇り降りが困難になり、末期には安静時にも激しい痛みが生じ、膝が完全に伸びなくなるなどの歩行障害を伴います。主な原因は加齢、肥満、過去の怪我、筋力低下など多岐にわたり、特に女性に多く見られるのが特徴です。治療には運動療法、減量、薬物療法といった保存的療法が中心となりますが、重症化すると人工関節置換術などの手術が必要になる場合もあります。膝の寿命を延ばすためには、早期発見と適切な筋力トレーニング、日常生活の見直しによる膝への負担軽減が極めて重要であり、放置せずに向き合うことが大切です。
▼▼▼▼▼▼▼▼
チャンネル登録はこちら
変形性膝関節症のメカニズムと基礎知識
関節軟骨の摩耗が引き起こす構造的変化
変形性膝関節症は、膝関節を構成する大腿骨、脛骨、および膝蓋骨の表面を覆う関節軟骨が、長年の使用や物理的なストレスによって徐々に弾力性を失い、摩耗していくことで進行します。本来、健康な軟骨は滑らかな表面を持ち、関節液とともに摩擦を最小限に抑えながら衝撃を吸収する役割を果たしていますが、軟骨が薄くなると骨同士が直接こすれ合うようになり、その刺激が骨膜や周囲の組織に伝わり、強い痛みや炎症を引き起こします。この過程で骨の端に「骨棘」と呼ばれるトゲのような突起が形成されたり、関節を包む滑膜に炎症が起きて「膝に水が溜まる」関節水腫の状態になったりします。日本の潜在的な患者数は2500万人以上とも言われ、特に高齢化社会においてQOL(生活の質)を著しく低下させる要因の一つとして深刻視されています。
進行段階別の症状と自覚症状の変化
初期から末期まで:痛みのサインを見逃さないために
病状の進行は大きく初期、中期、末期に分けられます。初期段階では、起床後の動き始めや、椅子から立ち上がる瞬間に膝に違和感や「こわばり」を感じるのが特徴です。この時期は、動かし始めると痛みが軽減することが多いため放置されがちですが、これこそが膝からの重要なサインです。中期になると、正座が困難になったり、階段の昇り降りが苦痛になったりします。特に階段を降りる際の衝撃が膝に響き、関節内部で引っかかるような感覚が生じることもあります。炎症が慢性化すると、膝が腫れて熱を持ったり、水が溜まって重だるい感覚が続きます。末期段階に達すると、軟骨がほぼ消失し、骨と骨が直接ぶつかり合うため、歩行そのものが困難になります。安静時や就寝中にも痛みが生じ、膝が完全に伸びきらない、あるいは「O脚」などの外見的な変形が顕著になり、自立した生活に支障をきたすようになります。
発症のリスク要因と予防の重要性
加齢・肥満・筋力低下が膝に与える悪影響
変形性膝関節症の発症には、複数の要因が複雑に絡み合っています。最大の要因は加齢による組織の老化ですが、それ以上に影響を及ぼすのが体重管理です。歩行時には膝に体重の約3倍、階段昇降時には約7倍の負荷がかかるとされており、わずか数キロの体重増加も膝にとっては大きな負担増となります。また、女性は男性に比べて骨盤が広く、膝が内側に入りやすい構造であることや、閉経後のホルモンバランスの変化により骨や筋肉が弱まりやすいため、患者数が男性の数倍にのぼります。さらに、大腿四頭筋(太もも前側の筋肉)の筋力低下は、関節の安定性を損なう最大の要因です。筋肉が天然のサポーターとして機能しなくなると、衝撃が直接関節に伝わるため、軟骨の摩耗が加速します。過去に半月板や靭帯を損傷した経験がある場合も、将来的な発症リスクが高まるため、継続的なケアが求められます。
現代医学における治療戦略とリハビリテーション
保存療法から最新の手術療法まで
治療の基本は、メスを入れない「保存療法」です。その中でも最も重要かつ効果的とされるのが運動療法です。大腿四頭筋を鍛えるスクワットや足上げ運動は、膝関節を安定させ、痛みを緩和するエビデンスが確立されています。また、痛みが強い時期にはヒアルロン酸の関節内注射や消炎鎮痛剤の処方、サポーターによる関節の固定が行われます。しかし、これらの保存療法を半年以上続けても改善が見られない場合や、日常生活が著しく制限される場合には手術療法が検討されます。比較的若い世代で変形が一部に留まっている場合は、自分の骨を切って角度を矯正する「高位脛骨骨切り術(HTO)」が行われます。一方で、高齢者や広範囲に損傷がある場合には、金属やポリエチレンで作られた人工関節に置き換える「人工膝関節置換術(TKA)」が選択されます。近年の手術技術の向上により、早期離床とリハビリが可能となっており、多くの患者が再び自分の足で歩く喜びを取り戻しています。
膝の寿命を延ばす生活習慣のアドバイス
今日からできる膝を守るための3つの鉄則
健康な膝を一生保つためには、日々の生活習慣の見直しが不可欠です。第一に、和式生活から洋式生活への切り替えが推奨されます。布団よりもベッド、床に座るよりも椅子、和式トイレよりも洋式トイレを使用することで、膝を深く曲げる動作を減らし、関節への過負荷を防ぐことができます。第二に、靴選びです。クッション性の高い靴や、足のアーチをサポートするインソールを使用することで、歩行時の衝撃を分散させることが可能です。第三に、適度な有酸素運動の継続です。水中ウォーキングやサイクリングは、重力による負担を最小限に抑えつつ筋力を維持できるため、膝への負担が少ない理想的な運動です。膝の痛みは「もう年だから」と諦める必要はありません。適切な知識を持ち、早期に対策を講じることで、100年時代を自分の足で歩き抜くための「健脚」を維持することができるのです。





